2006-06-01から1ヶ月間の記事一覧

対話の作法

(1)挨拶*1(2)誘いかけ*2(3)お願い*3(4)相談*4 *1:メタメッセージ(以下同じ)=あなたが居てくれて嬉しい *2:あなたと一緒に楽しみたい *3:あなたの力が必要だ *4:あなたの知性をあてにしている

「王と鳥」の垂直性

…宮崎駿の指摘は、風刺についていささかも触れていないにもかかわらず、例によって巧まざる鋭利さを発揮する。彼は言うのだ。「垂直空間の使い方ならポール・グリモーの『王と鳥』をあげないわけにはいきません」「それ以前は水平方向の動きしかありませんで…

Graphic Art

「視覚文化」の一翼を担うグラフィック・アート。それは現代における視覚表現の創造が、どのような欲望と統制のもとでなされているかを徴候的に指し示す。 近代の芸術は、絵画に限らず単一のカメラアイ(東浩紀)を要請した。ならば、ポストモダンの視覚芸術…

インターネット

ラジオ、テレビ、CT等々、最新のテクノロジーを取り込んできたはずの統合失調者の妄想システムは、いまだインターネットだけは取り込んでいない。 ・おそらくはネットの有線性、さらに言えば階層性がポイントであろう。 ・シュレーバーは回復期にピアノの…

「女性化」の問題

統合失調症患者における「女性化」の表現例 ・全裸になりがちな傾向 ・シュレーバー症例:「女性になって性交されることは素晴らしいに違いない」 ・希ではあるが女装 いずれも女性原理を強化することでシステムの暴走を緩和しようとするための絶望的試み。…

カップリングの破綻

システム論的因果性と構造的因果性とのカップリングが破綻。 過剰に作動するシステムの暴走が、構造を食い尽くす。 とりあえずシステムの作動を緩和し(抗精神病薬)、言葉を投与する(精神療法)ことが治療となりうる。 精神分析のみでは悪化の危険性がある…

去勢否認

去勢に対する態度の難しさは、それに従っても逆らっても(否認)効果は同じであるということ。 その存在を認めた時点で去勢の効果は完了する。去勢は反復される。トラウマは去勢の反復である。このためあらゆるトラウマは「なにかが喪失される」という形を取…

去勢

存在そのものの所有の断念を、存在論的な根拠に据えること。 「語る存在」であるための唯一の方法。 去勢を経験しうる存在は、それがサイボーグであれレプリカントであれ、すべて「人間」である。

問うことの享楽へ向けて

東浩紀の登場は、九〇年代の日本の言論界においては、間違いなく一つの事件だった。私は彼の文章に初めて接したときの驚きを、いまでも生々しく思い出すことができる。それは一九九四年のことだった。当時の私もまた、ささやかながら文章を書きはじめたばか…

……インタビューを終えてみて、彼の存在感の希薄さに、あらためて驚かされる。これはみずからが欲望の主体となるのではなく、ひきこもって人々の欲望を観察することが趣味、という彼自身の嗜好ゆえのものなのだろうか。 彼は弁明してはいるが、このスレッドは…

原武史『大正天皇』朝日選書

元神戸大学教授の精神科医・中井久夫氏には「昭和を送る」という、半ば伝説化した論文がある。昭和天皇崩御の直後に書かれ、やや右寄りエスタブリッシュメント向けの雑誌に掲載された。いまだ著作集には収められず幻の論文となっているが、内容を読めば、そ…

西山明 信田さよ子著『家族再生』小学館

いまや至る所で自明性が破綻しつつある。典型は「なぜ人を殺してはいけないのか?」という問いかけだろう。この質問を悪い冗談と笑って見過ごすうちに、「人を殺すとはどういうことか」という疑問にかられた少年が本当に殺人をおかしてしまった。もはや「国…

米本和広著「カルトの子 心を盗まれた家族」書評

私が米本和広氏と最初に面識を得たのは、一九九六年七月、当時氏が精力的に取り組んでいたヤマギシズム取材へ精神科医として協力したことがきっかけだった。私は本来、思春期青年期の「ひきこもり」問題などを専門とする精神科医であり、カルト問題は全くの…

「キル」ための反復運動

演劇的リアル 熱心な観劇者ではないが、舞台の善し悪しは、まず写真で判定することにしている。公演のスナップ・ショットが絵的に優れていれば、それはきっとよい舞台だ。夢の遊眠社の舞台写真は、初期のものから高い品質を誇っていた。同時期の、他の劇団の…

ネット文化と「ひきこもり」

最近、若い世代を中心に、インターネット上の掲示板などで知り合ったもの同士による心中事件があいついでいます。発端となるものが自殺系サイトなどの掲示板で一緒に死んでくれる相手を募集し、密閉した部屋や車などの中で練炭を燃やし、一酸化炭素中毒によ…

邦画の“暗さ”について

映画「グレムリン」を観て、アメリカ人には「雪」が描けないと喝破したのは、たしか蓮実重彦だった。爾来、注意してみていると、たしかにハリウッド映画の雪は雪らしくない。「ダイ・ハード2」(好きですけどね)だって、かんじんの雪だけは、なんか龍角散…

ねじまき鳥クロニクル

「ねじまき鳥」は、ぼくのハルキ観を決定的に変えた。過去の作品がすべて助走か習作にみえるほど、それは異質な作品だった。もちろんそれまでの作品もおおむね読んではいたのだが、少なくとも80年代までの村上春樹のことを、ぼくはあんまり大切に思ってい…

デヴィッド・リンチと分裂病

神経症者の言葉で喋るわれわれにとって、分裂病者とはまず第一に「われわれと言葉を共有できなくなってしまった人」である。言葉は本質的に空虚であり、われわれはその空虚さを利用できるからこそ、安心して語り合うことが出来る。しかし分裂病者にとって、…

ドナ・ウィリアムズ「自閉症だったわたしへII」新潮文庫

著者の処女作「自閉症だったわたしへ」は、自閉症者の自伝として十四カ国で翻訳出版され、ロングセラーとなっている。この第二作は、すでに古典とも言うべき第一作が書かれ、出版されて反響を呼ぶなかで、ドナが未来の伴侶となる男性に出会うまでの三年間の…

飯田真・中井久夫「天才の精神病理 科学的創造の秘密」岩波書店

病跡学という学問がある。さまざまな天才の作品や生涯を、精神医学の視点から眺めたらどのように見えるかを探るものだ。よく精神科医は天才まで病気におとしめてしまうと非難されがちだけど、この本を読めばそんな誤解も解けるだろう。何かを創造するという…